廃墟と動かないカメラ
これも高校の頃の話。
地元で心霊スポットとされている、廃墟と化した古い病院があり
そこへ5人で乗り込みました。
女子校だったので女の子だけでしたが、体格だけはすでに大人並みの子がそろっており、プロレスラーみたいな立派な子も2人いて、心細いメンツという感じではまったくなかった。
建物は昼間だったけど薄暗くて、なかなか凄い雰囲気でした。
さて廃墟に入ってゆくと、5人のうち2人が自称霊感ある子で、
「ヤバい気配を感じる」「子どもが見える」「いや、親子だ」「母親と男の子だ」
とか何もないところに向かって言い出し、
その言い方がまためっちゃ真剣なので、他の2人もその気になってキャアキャアしている。
私は「何!?どこ!? 見えない!!ぜんぜん見えないよ!!みんなだけ楽しんでズルいよ――――!!!」と、ひとりキレ気味。
ところで、よく「遊び半分でそういう場所へ行くな」という人がいるけど、
私にはふざけ半分とか遊び半分とかいう発想自体がないので、その言葉の意味がわからない。
いつも全力だった。真剣だった。本気で出会いたかった。
なのに私の期待はいつも裏切られた。
でも、その時はカメラを持ってきていたので
「見えなくても写真には写るかも」と気を取り直し、4枚ほど写真を撮りました。
が、4枚撮ったところで、突然カメラが故障。充電はバッチリしてあったのに、ボタンを押してもまったく反応しなくなってしまいました。
他の子に訴えると「だから写真なんてやめろって言ったじゃん!」「携帯までダメになったらどうするの」と逆に叱られ、仕方なくそのまま帰る。
が、家に帰ってきて改めてカメラのボタンを押すと、ちゃんと作動するし、ちゃんと写せるのです。
でも廃墟で撮った4枚の写真は真っ黒で、何も映っていませんでした。
病院は電子機器があるので、電磁波の影響で怪奇現象が起きると言われますが、そこは本当に廃墟でどの部屋にも電子機器なんてなかったし、たぶん電気も通っていない状態だったと思うのです。
だから電磁波の影響の線はない。
ひとつ考えられるのは、人間が発する強い感情は、電子機器に影響を与えることがあると、私は考えています。
科学的に証明はできていないかもしれないけど、
何しろ私自身が、よく学校やバイト先の機材を狂わせたり壊したりして「あなたが来たとたんこの○○がおかしくなった」と言われる人間なのですよ。
自分の本音を無視して意地や義務感でゴリ押ししようとした時とか、
時間が迫っていて忙しくてイライラしているときに限って必要な機械がフリーズしたり故障したりね。
だから人間は、周囲に迷惑をかけないために、イヤなことはサボらなくちゃいけないのです。
勇気要るよね。
でも共同作業ならなおさら、がんばって首突っ込んじゃいけないのです。
抑圧された感情は目には見えなくても何らかの形で放出されていて、結果的によけい場が混乱するんじゃないかと思う。
それで話は戻りますが、
私の考えでは、カメラはその場のみんなの、昂ぶった感情に反応してイカれたのだと思います。