【ポストカード】病室に人魚君
ご注文で描かせていただいたイラストです。
実は・・・諸事情あって一度はお断りさせていただいた依頼です。
ですが先の二つも同じ方からご注文をいただいており
「3つのイラストが欲しかったので3個目もやはりあなたでないと」
「このシーンはとても重要なものなのだが、他の人にも何度も断られて困っている」
とのことで、お引き受けさせていただきました。
ただ、絵描きがお断りするのって、表向きどんな理由をつけようと
けっきょくのところ「やる気ない」に尽きると思うので、
こういうとき説得で押し切るのは本当はあまりおススメしません💦
気乗りしないまま着手して変なものが出来上がってしまったら
頼んだ人も困るだろうということでの辞退ですし
また依頼主様の立場も「先生がお忙しいのはわかりますがそこをなんとか・・・」
という原稿待ちの編集者みたいになってしまったら楽しくないですよね。
今回、最終的にお引き受けしたのは
やりとりの途中でふっと図案が浮かんだためで、偶然というかご縁というか?
それがなければ、最後までお断りしていたかもしれないです。
DAでは、もちろん依頼主様のサイトのPRの目的もあってなのですが、
私の気持ちを正直に書かせていただきました。
「人は空想の世界でなら、何でもなりたいものになれるはず。
どんな冒険も、超能力も、不死身の肉体だって手に入る。
最初私は、彼の人魚は病院に行ったことさえなくて
彼の代わりに世界中の海を旅しているのだと思い込んでいた。
なのに、彼は空想の中でさえあいかわらず病院にいて、
ただただ家に帰りたがっている。私はそのことを悲しいと感じた」と。
依頼主様はアメリカ在住の男性、生まれつきの難病をお持ちだという方です。
ブログ>> Cameron Lives 365: Needles, and doctors, and hospitals oh my!
ご自身の写真をもとに人魚にした絵を、とのことで
1枚目のご注文をいただいた時からずっと継続して、
雑談も含めたくさんのメールをやりとりさせていただきました。
たとえばですが
「入院中の母の似顔絵をお願いします」という人がいたとして
「病室の母を描いてください」とは言わないと思います。
「せっかくなので趣味の社交ダンスを楽しんでいた頃の母の姿を・・・」
というようなことになるのではないでしょうか。
自らの耳を切り落とし
その直後に「包帯姿のオレ」の自画像を描いたのは、かの有名なゴッホです。
「リッチになって美女に囲まれてる未来のオレ」でも描こうかな♪
なんてことは思わないわけです。
そのような注文をするのはむしろ金持ちのパトロンたちの方であろうと思います。
依頼主様本人が「病室のオレ」を頼むとしたらなぜなのでしょう。
自伝的小説の断片のようなものもいただいているのですが
これは決して悲しいシーンというわけではなく
「親友が迎えに来てくれた」「人魚だということがバレたが受け入れてくれた」
「もうすぐ家に帰れる。やったぁ」くらいのライトなノリなんですね。
お好きな漫画の一つに「俺んちの風呂事情」が挙がっていて
確認したところ、いわゆるほのぼの日常系ジャンルのものでした。
私ホラーマンガの「人形峠」に夢中になってたとこなんだけど(;'∀')
なので私も頭を切り替えて
「理解ある友に恵まれ家にも帰れるやったぁ☆」というライトでハッピーな絵を描かせていただきましたが
そして感謝のお言葉もいただいているのですが
「とても重要なものだ」ということについては、何がどう重要だったのか
また「人魚化するという事象があなたにとって何を意味するのか」とも質問してみたが
それについて明確なお返事をいただくことはできませんでした。
もしかしたらですが 親友だった方に
難病以外に、もう一つ受け入れてほしいことがあったんだけど
ついに言えないままだったのかもしれないですね。
だとしても今は 過去に囚われることなく
未来の幸せに向かって踏み出してほしい
そんな気持ちをこめて描きました。