Fish & Paintings Diary

アクアリウムとアクリル画

映画「コレット」

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映画『コレット』公式サイト

 

フランスの作家コレット

人生の前半を描いた映画です。

 

 

私が読んだことのあるコレットの小説は

「牝猫」「青い麦」「シェリ

生き生きしたキャラクターとパンチのきいた心理描写、

フランスの小粋な生活が描かれた作品で、おもしろくてサクっと読めます。

 

シェリ」の主人公

引退した元高級娼婦のレアや、その友達の個性溢れるおばちゃんたちなどは

なんともいえずおもしろくて好きでした。

 

私から見てなのですが

彼女の小説の男性キャラには男性的な魅力がありません。

美形でちょっと変わってて、青年なんだけど幼くて

妖しい魅力みたいなものはあるんだけど

カッコイイとか 男前だな、とは思えない。

そのぶん女性たちの芯の強さが引き立っていて

女(あるいは猫)が太陽で、男はその周囲をくるくる回っている惑星に過ぎないような

そんな雰囲気の世界が展開されていた気がします。

 

そのかわいいけどどこか信用ならない男たちの姿は

映画のウィリーの人間性と微妙に重なって見えてきます。

 

ストーリーは、コレットが最初の夫ウィリーと結婚するところから始まります。

 

田舎に住んでいたコレットは、ウィリーの生活の実態をよく知らないままに

口説き落とされてパリに連れてこられて、新婚生活をスタート。

家柄はよかったらしいウィリーですが、

遊び人で、酒にギャンブルに不倫にと金をつぎ込み

作家の仕事は、数行のあらすじを言っただけでゴーストライターに丸投げ。

さらに思ったように本が売れないのと浪費癖のせいで

ゴーストライターたちへの給料も未払いで争いになる始末・・・

 

そこでコレットが、自分の学生時代を題材にした小説「クロディーヌ」を執筆。

当時の文壇の概念と違っていたようで、一度は「出版できない」と却下したウィリー。

 

理由は「情景の羅列で筋がない」というようなことを言っていて

これは、わかる気がする。

私はクロディーヌは読んでませんが

彼女の他の作品でもそういう感想を持つ人はいるかもしれない。

 

しかし数年後いよいよ金に困って、ウィリーの添削で書き直したものを出版することに。

文才はないウィリーですが、商魂だけはたくましく

「情熱的な描写を入れろ」とアドバイス

もっとも当時の基準なので

「『彼女の目は閉じられ口は薄く開いていた』と書き加えろ」「いかがわしいわ」などという謎の会話が交わされます

 

(でもマルキ・ド・サド悪徳の栄え」が出版されたのが1700年代の終わりですよね!?

このときは1800年代の終わりで、100年も後じゃないですか。

「おねえさまの腿の間の柘榴色の果実にあたしのいけない指がゆっくりと」「いかがわしいわ」

くらいの会話ならわかるんだけどな・・・まあいいや)

 

ウィリーの名で出版されたクロディーヌはたちまち大人気に。

それまで出版社がターゲットとしていなかったらしい、

若い女性の購買者という新たなマーケットが誕生します。

 

「クロディーヌ」という名の化粧品ブランドや女性向け雑貨が登場し

舞台の公演も始まり、今でいうクロスメディアが大展開°˖☆◝(⁰▿⁰)◜☆˖°

 

才能ある妻と、社交的で浪費家で商魂たくましい旦那という組み合わせは

映画「ビッグアイズ」を彷彿とさせ、

 

aryoshka.hatenablog.com

 

いやな予感がしてくるのですが、

ウィリーはまあまあ教養もあるし柔弱な面もあったりで

ビッグアイズの旦那ほどのサイコパスではなかったみたい。

 

ウィリーの浮気癖ですっかり仮面夫婦になった二人ですが、

クロディーヌのヒットにより、愛で結ばれる代わりに

ビジネスパートナーのような関係となって協力し合ってゆく

別れの理由も、仕事上の裏切りと決裂なのでありました。

 

・・・・・・

 

私も、誰かが自分の代わりに誰か絵とかマンガとか描いてくれて

横でやいやい言ってるだけでいいなら、言いたいことは山ほどあるんですよ・・・

一応オリジナルでのヒット作も人気キャラも持ってるので・・・

「ほらこれ伸びてるじゃん、今のうちに続編描きなよ!」とか

「こういうのがウケるんだよ」とか、アドバイスできる程度には知ってるし

界隈の動きや傾向を調べ上げて応用するのは得意だったしね。

 

ただプロデューサーとしての自分が何を言っても

絵描きの自分が従ってくれないのはなぜなのでしょう( ̄∇ ̄;)

 

コレットは儲け主義のウィリーのビジネスプランにきっちり従ったからこそ

人気作家になることができたのでしょうか?

 

私は、やっぱり違うと思います。

 

書くきっかけとなったのは確かにウィリーの存在だし、

クロディーヌの一作目が爆発的にヒットしたのも彼の名前と助言あってのことかもしれませんが

彼女がエネルギッシュで才能ある書き手であることには変わりありません。

 

一作目の後「もうクロディーヌものはイヤ」と言っていますが、

別のキャラクターで別の小説を書いてもちゃんと売れたのではないかな。

 

ベストセラーは所詮ベストセラーでしかなく後世に残るものじゃない、などと言いますが

実際、今では他の作品の方が文学史上に残っていて

クロディーヌシリーズなんて私も知らなかったし。

 

たとえ自分の名前で出版社に持ち込みして、最初は断られたり

遅筆になったり、評価されるのに時間がかかったり、最初はあまり儲からなかったり

(だいたい金遣いの荒いウィリーがいなければべつに、そこまで大金稼ぐ必要もなかったんだし)

ようは、遠回りになったとしても

一人で自由に、自分のペースで働いても

彼女はちゃんと実績を残したはずだと、私は思います。

 

逆に、本当に表現したいものが表現できずに

読み手に媚び続けないと作家業を維持できないなら

そんなのやる値打ちあるの?とも思う。

 

ブロガーだってそうだけど

伝えたいことを伝え、書きたいものを書いて、

なおかつ読者を獲得する方法を模索するのが一番じゃないですか。

 


ところで

コレットは演劇女優として舞台に出るのも好きだったようで

男装の貴族ミッシーを引き込んで、宝塚のようなものを上演したりもしています。

このミッシーがカッコイイのです(⋈◍>◡<◍)。✧♡

見た目じゃなくて、ちょっとした言葉でガシッと女心を掴む感じがよくわかる!

途中からナイトのように登場してきて、

とても夢のあるラストになっているのですが

 

まあ、ここで落ち着くわけがないよね・・・

コレットの人生の後半もけっこう波乱万丈・・・

いつか映画になったら観てみたいですね。

 

おもしろかった♪

 

aryoshka.hatenablog.com

 

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